「お客様目線」の住まいから、「あなた目線」の住まいへ。

2020.8.20

暮らしのなかにある “誰か” にとっての不自由さを解消し、誰にとってもすごしやすい環境を用意するユニバーサルデザインの住まい。

近年、バリアフリー・ユニバーサルデザインが施されていることは、物件の入居率も左右する重要な要素になっています。 多くは、高齢化社会にそなえ、という枕詞でプロモーションされるユニバーサルデザインですが、快適なデザインを必要としているのは、高齢者だけではありません。

ケガをしたり、病気の後遺症があれば、ほんの少しつま先を持ちあげるのも困難というケースも多くあり、段差のないフロア設計、スロープやエレベーターの設置は、確実に必要とする “誰か” が存在します。

そして、そのデザインは、誰にとっても心地よいものであることが大切です。 それでは、誰にとっても快適な住環境とは、どのように考え、作っていけばよいのでしょうか。改めて考えてみます。

試着をあきらめていた人の存在に気がつく

2019年8月、丸井グループでは “すべての人” が使いやすい試着室「みんなのフィッティングルーム」の体験イベントを開催しました。

「試着することを諦めている」という車椅子の女性の言葉をきっかけに生まれた、このフィッティングルームの広さは、通常の試着室の約3倍あります。

結果として、ベビーカーを利用する子ども連れ、友人同士、ファミリーでも利用が可能になり、車椅子の人のみならず、いままで試着を諦めていたか、不自由な試着方法で我慢していたにちがいない、多くの人が喜ぶ姿も見えてきました。

みんなの、の意味するところに改めて向き合うことで、見えていなかった改善点が明確になり、まったく違うデザインが生まれたのです。

着想から1年半かけて完成したこの試着室は、今後、丸井全店に広げることを目指しているといいます。 見慣れてしまった当たり前の光景を見直すことで、新たに誕生したデザインは、想定以上の利点を見出すことにつながっていた、という好例ではないでしょうか。

廊下の照度をあげて、入居率もあげる。

この試着室には、他にも、照明の明るさや色調整ができる、弱視の人に配慮したスイッチがあり、耳の聞こえない人のための筆談用メモなども用意されていました。

弱視など、視覚に障がいがある場合には、音、匂い、日差しなど、目で確認する以外の感覚を駆使して周囲の情報を収集し、安全や方向を確認しながら歩行しているといいます。

現状では、街中の夜間照明でも照度が足りないケースは多いといい、マンションの廊下やエントランスも例外ではありません。

明るさに不安がある場合は、夜間の外出などは諦めてしまうようです。昼間であっても、照度が足りない環境であれば、住まいとして選択するには不安があるでしょう。

充分な日差しが入るか、明るい照明のある住環境になっていれば、弱視の方も、安心して移動できる可能性が高まります。

また、明るくなることで防犯対策や、印象アップといった改善にもつながり、みんなに良い影響があるとも考えられます。共有スペースの照度などを再確認し、リノベーションの機会があれば、見直してみるのも良いでしょう。

具体的な「あの人」の喜ぶ住まいをつくる

ふわっとした、不特定多数の人に受け入れられそうな商品(住まい)よりも、確実に誰かのためを目指したモノの方が、メッセージは明確です。

メッセージが明確になっていれば、お客さまは、自分に関係のある商品か否かという点を自然と分析したくなり、少なくとも、その他大勢とともにスルーされてしまう、という最悪のケースは避けられるでしょう。

一例に、万人受けはしないかもしれないが、特徴がはっきりしいる人気の住宅があります。 (株)アールシーコアの販売するその家は、”BESS” というブランドネームをもつログハウス。

従来の山奥にあるような無骨な丸太小屋とちがい、外観が洗練されているため、住宅街にあっても大きな違和感はありません。

販売戸数は右肩上がりの成長を続けているといい、2017年1月~12月には前年同期比109%となる1050棟の新築住宅を受注し、過去最高の実績を更新しました。

社長である二木浩三氏は、この家を選ぶ人々は「本当の自由な暮らし」や「決まりごとにしばられずに自分らしく生きてみたい」と考える人ではないか、とあるインタビューで話しています。

自由な発想が生む、新たな間取り。

「本当の自由な暮らし」を求める人々の選ぶその家は、たとえば、玄関ドアを開けると、玄関ロビーも廊下もなく、いきなり広々としたリビングルームがひろがっています。

庭につながる大窓の向こうには、ウッドデッキが広がり、窓を開け放てば、家の中と外が一体化するような設計です。

キッチンやベッドが同じフロアに並んでいるケースも多く、決して大きくはない家ですが、従来の間取りに縛られない、住まい手の暮らしに合った、思い思いの空間デザインが実現しているように見えました。

この住まいのテーマは、生きる感性を重視すること。広々とした空間ゆえに、子供たちは伸び伸びはしゃぐことができ、車椅子であっても自由に室内を動きまわることも出来そうです。木でできた家なので、手すりなど、必要な物の取り付けも簡単に出来るに違いありません。

明確なテーマのある住まいが、心地良さへの近道となる。

ログハウスは生き物なので、メンテナンスもそれなりに大変です。しかし、木にはコンクリートの12倍もの断熱性があるといい、夏涼しく冬暖かいうえ、調湿性、森林浴効果など木ならではの効果もあります。

そして、感性を大切にしたい住民にとっては、手入れをする手間こそ、愛着がわく大切な工程にもなっているようです。

生きる感性、という一つのテーマにこだわることで、近年の住宅では見落とされがちだった、生きる喜び、を住人の暮らしに蘇らせた、この住まいもまた、テーマからさらに広がる、大きな可能性を生みだした好例である、といえそうです。

マジョリティとマイノリティ、健常者、障がい者、そして高齢者。どの立場になったとしても、快適な住環境は守られていてほしい。

見落とされがちだった、誰かにとっての不自由さを解消していくためにも、まずは、目のまえにある当たり前を見直して、願わくば、明確なテーマのある住まい設計を試みる。

こうした行動が、結果として、多くの人の住みやすさ、心地良さをつくる近道になっていくといえるのではないでしょうか。