2020年代は「オートロックでないと不安」から「スマートロックでないと不安」へ。

2021.2.3

所有物件の玄関につける鍵を、「物件価値の重要な要素」として考慮したことはあるでしょうか。

鍵は、ライフスタイルを進化させる可能性ももっており、いま、注目していただきたいアイテムです。

集合住宅のオートロックについては、情報も多く、防犯対策として導入すべきか否かといった議論、カードキー型、集合キー型、非接触型などのメリットデメリット比較など様々ですが、自信をもって選びとることのできる結論は見当たりません。

物件オーナーとして、オートロック採用の場に立つのが最善か、迷うこともあるのではないでしょう。

さらに、一つの結論に達したとしても、建物に付随する設備であるオートロックは、管理組合で承認されなければ工事にこぎつけることが出来ないため、結局、真剣に考慮するのは、後回しにしてしまう要素であるともいえます。

しかしここに来て、マンションの共用玄関キーは選べなくても、各家、各戸の玄関キーは、スマートロックにしておきたい、という思いが強まるのでは、という兆しが見えてきました。スマートロックのメリットを改めて見てみます。

将来的には手ぶらで施錠可能な上に、ピッキングの心配もなし

手ぶらで施錠可能な上スマートロックとは、スマートフォンのアプリなどを使って鍵を開閉できるシステムのことで、通信機能や認証機能を備えており、セキュリティの高さが特徴です。

スマホを使用せず、指紋などの生体認証で開錠できるモデルも出ています。スマートロックを導入するメリットの一つは、開錠施錠に鍵を出し入れする必要がない点でしょう。

鍵を身につけてさえいれば、ドアに近づいただけで開錠でき、オートロック機能で手ぶら施錠も可能なため、毎度、カバンの中を大捜索して鍵を取り出す手間が省けます。

防犯面については、鍵穴がないことから、ピッキングに合うこともなく、鍵の開閉履歴が記録されたり、開錠・施錠がリアルタイムで通知されるモデルもあり、異常があれば、即座に気がつくことが出来る仕組み。

取り付けも簡単で、ほとんどのモデルは業者に頼む必要もありません。

最大の要素は条件つきデジタルキーを発行できること

そして、スマートロックが、トレンドになり得る最大の特徴は、条件つきデジタルキーを発行することができる点。また、それを必要とする状況が整ってきたことにあります。

条件つきデジタルキーとは、「相手・時間・回数」を指定して鍵を発行することで、鍵の仕様を認められたユーザーは、住人と会わずに直接家に入ることができるのです。

これまで、この機能は、鍵を持たない家族や友人を先に家にあげられる点や、鍵を対応させたスマホを紛失しても、遠隔で家族に開錠してもらえる点がメリットとしてフォーカスされてきました。

しかし、今後はもっと幅広く、必要な他人に対して、この条件つきデジタルキーを発行して活用することがメリットとされる可能性があります。

デジタルキーで家事代行や買い物代行も安心して頼める

デジタルキーを受け取る必要のある他人とは、たとえば、家事サービス代行業者、食品宅配業者などが挙げられます。

これまで、家事代行も食品宅配も、ほとんどのケースで、誰かが家にいることが前提となっていました。

業者に鍵を預けられるサービスがほとんどですが、やはり、物理的な鍵を預けるのは、安心だと言われても、不安に思ってしまうのは仕方のない事。

食品宅配も、日時指定に融通はきいても、ほとんどが直接受け取る必要があり、一部、鍵つき専用ボックスで配達され、宅配ボックスに預けてくれるというサービスもありますが、数は少ない状況です。

ある調査によると、代行を頼みたい理由は、圧倒的に「家事代行で空いた時間を自分の時間として使いたいから」であり、できれば、在宅することも含め、何のケアも必要ない状態で、留守中に「届く食材を直接冷蔵庫まで届けてくれたり」「部屋がきれいに片付いたり」といったことが叶っているのが理想といえます。

しかし、鍵を預けることを不安に思うかぎりは、在宅したままサービスを受ける方法しかありません。結果として、それができない人達は、このサービスを受けられないのです。

家事代行や食品宅配業者へ、物理な鍵より各段に安心な、条件付きデジタル合鍵を発行できるとすれば、一気に「在宅していなければ頼めない」という問題点が解消できるでしょう。

在宅ワーク時代の暮らしトレンド

2020年、多くの人にとって在宅時間が大幅に増えた年となりました。

在宅している分、家事にかけられる時間も増えたという予測も成り立ちますが、実際は、家事“負担”が増えたという声の方が多いようです。

確かに、食事の回数も増え、食材の量も増え、在宅時間が長くなることで、家にあるものの使用頻繁がふえれば、そのぶん掃除や洗濯も必要になるでしょう。

こうした状況下、選択肢の一つとして「家事代行サービス」の需要は、益々高まる傾向がみられます。 家事サービス代行業者 “CaSy(カジー)” が、9月に発表した記事によれば、新型コロナウイルス拡大により発出された緊急事態宣言時の4月度に対し、10月度のサービス件数は174%、稼働したキャスト数も過去最高でした。

野村総合研究所「家事支援サービス業の推計市場規模」(2018年3月発表)によると、2025年の市場規模推計は、8,130億円となっており、これは「語学ビジネス」「コールセンター」業界と同じくらいの規模だといいます。

また、食品宅配市場規模も、2018年度は2.1兆円と前年度比+2.8%増加。2016年度に2兆円に達して以降、毎年500億円規模のペースで堅調に伸び続けており、2023年度には、推計2018年度比113.0%の2兆4,172億円に達する見込みとなっています。(矢野経済研究所)

市場の伸びに反して、実際の利用者が少ない原因

一方、矢野経済研究所が8月に公開したデータでは、今年度の家事代行サービス市場規模は、前年度比0.5%減の4,746億円。

ウイルス感染拡大対策として、非対面が望まれることから、市場拡大に若干歯止めがかかったとあります。LINEユーザーを対象にした別の調査では、家事代行サービスを利用したい意向の人は、全体の35%と高かったものの、実際に利用した人は3%と極少数でした。

市場は順調に伸びているにもかかわらず、実際の利用者が、知名度に比べて増えにくくなっているのは、決定的に頼みずらい要素が潜んでいると考えて良いのではないでしょうか。

「鍵のトレンド」が「暮らしのトレンド」の成長を助ける

利用率が、元々増加傾向にあった背景には、環境変化のみならず、国策として「家事支援サービス導入促進」に取り組んでいることも影響しているとも考えられ、全体の傾向としては、やはり今後も需要は増加傾向にあると捉えて差支えないでしょう。

そこに、スマートロックの導入が加速し、市場が慣れてくれば、「家事代行サービス・食品宅配サービスの成長」の一助になる可能性があると読み取ることが可能です。デジタル合鍵であれば、コピーもできず、サービス終了後には解除ができます。

現金は、紛失しても、紙幣に名前が書いてあるわけではないので取り戻すことができませんが、フィッシング詐欺被害などで口座から引き出されてしまったお金は、「知らずに引き出されてしまった」というデジタルデータが残るため、補償されることがほとんどです。

同様に、スマートロックを介して被害にあったとしても、明確な入退室時刻のログは残るため、犯罪が野放しになる可能性も低く、従って、犯罪に利用される確率も低いと考えられます。集合住宅の場合は、共同玄関がオートロックであれば、各戸の玄関をスマートロックにしたところで、問題は解決しないという課題は残ります。

しかし、一戸建て物件や、まだ共用玄関をオートロック化していない物件については、スマートロックを取り入れることで、物件価値の魅力アップにもつながるのではないでしょうか。

物件オーナーが、自分で取り付けることも可能なので、ここに来て、試す価値は充分にあるといえそうです。