不動産の運用はあなたの人生そのもの「不動産の価値も人生観も常に変動していく。」

2020.5.7

ある日、まだまだ元気だと思っていた親が亡くなり、心の準備をすることもなく土地不動産の所有権を受け継ぐ相続人になってしまうとしたら、どんなふうにその土地の未来を考えるでしょうか。

ある終活に関する意識調査では、親の立場で終活準備はしていても、土地相続については具体的な話し合いをしていない、という人がほとんどなのだそうです。

住むという道を選択しない場合、市街地であれば、たとえば、駐車場はコストもかからず、固定資産税分くらいは稼げると言われてきました。しかし一方で、空き地がつぎつぎ駐車場になっていくなか、もう充分足りているようにもみえます。

一朝一夕では見つかりそうもない最適解は、どのように考えていけば良いか見ていきましょう。

不動産の価値は常に変動している。

不動産の価値(不動産評価、金融評価)は、品質よりも立地で決まりますが、その値は常に変動しています。

近年、日本でも立て続けに未曾有の自然災害を経験し、河川氾濫や土砂災害などを目の当たりにしたことで、住宅購入を考える際の地盤に関する意識も高くなりました。

災害リスクの改善が見込めない土地については、自治体が取り組む「立地適正化計画」上の居住推進エリアから外れる場合もあり、結果として、病院や学校などの施設が整理されて減少し、交通の便が悪くなるなど、利便性が失われていくことが考えられます。

災害リスクそのものは不動産価値に反映されていません。しかし、利便性の低下は不動産価値の下落につながるため、地域の動向は見ておくとよいでしょう。

また、国土交通省のハザードマップ(被害予測地図)は毎年更新されており、災害対策が施されて安全になったエリアは危険区域から外すなど、掲載情報に反映されていますので、情報源の一つとして有効です。

土地家屋の行方、売却か運用かを考える。

自治体の動向、地域の人口推移、利便性の変化など、現状の把握ができたら、運用か売却かの選択をします。判断材料として「維持」「解体」「売却」「運用」など、それぞれどんな費用が必要になるのか見てみましょう。

注意すべきは、決断を迷って先延ばしにしているあいだも、固定資産税などの費用は発生し続けること。

負の財産にならないよう早めに行動することが大切です。

ケース1. 土地家屋を持ち続ける「維持費」

住む予定がない場合も、維持費が継続的に出ていきます。

家屋は、人が使わなくなったその日から日に日に朽ちていくため、定期的な換気や雑草の手入れは必須。手入れに赴く交通費、または、管理を任せる費用などがかかり、他にも、税金や修繕費など、何もしなくてもかかる費用もあるため注意が必要です。

(維持費用の例)
・固定資産税 
・都市計画税 
・火災保険 
・光熱費の基本料金 
・修繕費 
・管理費 
・雑費

また、手入れや訪問をすることなく1年経ち、国土交通省の規定により市町村が「空家」と判断すると、市町村のデータベースに登録され、観察対象物件へ。そのまま空き家の状態が35年続くと「特定空き家」と認定され、固定資産税は最大6倍にもなります。

ケース2. 土地家屋を手放すための「解体費用」

解体することに決めた場合に、必要になる費用。更地にすると、土地の買い手がつきやすくなり、早期売却の可能性が高まるというメリットがあります。

資産価値のない家屋を残したままでは、買い手に家屋の解体やリフォームなどの負担ががかかるため売りにくくなるのです。解体費用の相場は100万円~300万円といわれていて、木造と鉄骨造と鉄筋コンクリートで変わる他、建っている地域の性質によっても差が出ます。

たとえば、田舎の広々とした土地であれば、短期間に大きな重機でざっくり豪快に解体できますが、都心の市街地や住宅地では、小型機材で、かつ、養生シートなどで周囲に危害が及ばないようケアしながら取り壊すため、日数も人件費も余分にかかるのです。

ケース3. 家屋を解体したあとの土地の「維持費」

土地だけキープしておきたい場合も、固定資産税、都市計画税などの維持費は必要です。

住宅用の土地には、固定資産税が最大1/6になる優遇措置が適用されているため、家屋がなくなり更地になると、税率はは大幅に上がり3~4倍になります。

もしも、この先、土地を運用したい意志がある場合は「家屋を残したままの維持費」と「家屋の解体費と固定資産税/都市計画税」を比較して決めるとよいでしょう。

ケース4. 家屋を解体して土地を貸す

土地を貸すことで、地代という現金収入を得ることができます。

貸す場合に活用する「定期借地権」は、更新が一切ない契約。双方で〇〇年契約と定めれば、契約期間満了後には更地にして土地が返還されるため、計画的な土地活用が可能になります。

また、メリットとして、借入金なしで始めることができるため、テナント募集や空室リスクもなく、運用の心理的負担、経営リスクは小さいといえるでしょう。

ケース5. 土地を運用する

土地を貸すより、さらに積極的に活用するのが賃貸などの運用です。

戸建て賃貸、アパート経営、駐車場やコインランドリー経営など、活用方法はアイデア次第にも見えますが、一方で、法規制、税制、事業収支計画など、さまざまな専門知識が不可欠。

また、運用開始後の管理や運営業務も発生することから、トータルでアドバイスしてくれる頼れるパートナーを見つけておく必要があります。

ケース6. その他、土地家屋の活用が困難なケース

活用アイデアとして、民泊などの宿泊施設にしたいという声もありますが、守るべき法規制が多く、ハードルが高いのが現状です。

・宿泊施設にする場合のハードル
 宿泊向け施設として運用するための「改造」が必要。「建築基準法」により、人が泊まる建物は「特殊建築物」とされ、防火規制、避難規制など厳しい基準が適用されるほか、衛生上の観点から「旅館業法」も適用されます。

・宿泊利用の例外
 企業など特定の人を対象とし、使用目的を「研修」に限る場合は「特殊建築物」とはならないため、改築は研修室を用意する程度ですみますが、貸し出すことで得られる使用料は食事代程度です。

相続した土地の未来を選択する

こうして見てみると、不動産価値、今後の希望など、気になる課題を一つずつ整理していくことで、進む道は、すっと絞られていくのではないでしょうか。

あとは、どの選択をするかにより、適切な専門家を探し、アドバイスを受けつつ、早めに着々と前に進めていくことが大切になるでしょう。