地域に最も寄り添うオーナーこそが、世の中の需要を住居に反映させられる。
2021.2.3
入居者退去後の現状回復リフォームは、賃貸物件経営において、資産価値を向上をさせる有益なタイミングとなるでしょう。
築年数が浅い場合は、壁紙、床、水回りなど、使用感が目立つ場所のみ新しいものに交換するだけで充分かもしれません。
しかし、長めの年月を経た後のリフォームであれば、流行を取り入れる、生活様式の変化に合わせた改修を行うなど、全面的な見直しを視野にいれておいて損はないでしょう。
最新住宅トレンドや消費者動向を常に把握しておくのは大変ですが、ふいに「空き室」期間が訪れた際の対策だけでも把握できていれば、いざという時にも慌てずに済みます。
空き室期間は、品質向上、資産価値向上の絶好の機会です。その時が来たら、どんな対策をとればよいか確認してみましょう。
物件価値を下げる、ターゲット層への思い込み。
住宅の立地や周辺環境から、住まい手となるターゲット層は概ね決まっていることが多いでしょう。
スーパーや小学校が近くにある大型マンションはファミリー向け、駅近ワンルームは働く若者向け、といった具合です。しかし、建築当初に想定されたターゲット層は、年数を経ても変わらず、据え置きと考えてよいものでしょうか。
時が経てば、周辺環境にも変化は起きます。変わらず小学校はあり、スーパーは繁盛していても、住んでいなければ分からないような静かな変化は存在するもの。
2020年8月に公開された、矢野経済研究所の国内住宅リフォームの市場調査によれば、「職住融合型リフォーム」や「郊外の中古住宅需要の増加」など、新しい需要の兆しがあるといいます。
この一年で、職住融合や在宅勤務という言葉はかなり浸透しましたが、実際、物件のあるエリアに同じ波が来ているかどうかは、生の声を聞いてみなければ分かりません。
世間の動向に準じていれば、ファミリー層向けだった部屋も、在宅勤務で、仕事部屋とリラックスするための空間を分けたいと考える、一人暮らし層の求める部屋になっている可能性もあるでしょう。
駅近ワンルームも、地域の高齢化により、若者というより一人暮らしのお年寄り向けになっているかもしれません。こうした市場のニーズに合わせて手を加えることができれば、消費者に選んでもらえる確率はぐっと上がるでしょう。
部屋を探しにくるのは、どんな層?新鮮な地域情報を収集する。
ニーズを知るために、まず出来ることとして、不動産会社から得られる地域の動向は大変有益だと考えます。
たとえば、エリア開発の進捗状況、周辺の企業動向などを調べることも役に立つかもしれません。しかし、もっと短期的に来月から住みたい人のニーズを知るには、最も新鮮な声を聞く必要があるのです。
商店街があるような街であれば、人の流れや変化について、探偵のように聞いてまわることも一つの手ですが、多くの場合、そうした時間も手間もかけられません。
ところが、地域の不動産会社スタッフは、街のこともよく勉強しており、それと同等の調査を日ごろから行っているのです。
日々、入居希望者を案内し、ニーズを聞き、最終判断の現場を見ているスタッフは、一次情報に最も近い存在といえるでしょう。
物件エリアや所有物件のターゲット層に変化があるか、まずは、不動産会社に動向を聞いてみる。これは、物件価値を高めるリフォームへの力強い最初の一歩になるはずです。
住宅リフォームで、言語化できるインテリアトレンドを取り入れる。
ファミリー層がターゲットだという思い込みのあった物件が、実は、より一人暮らし層に求められる傾向にあると判った場合、どんな対策が考えられるでしょうか。
頼れる手段の一つは、若者向けリフォームが得意な業者を探すことでしょう。床材や壁紙にもトレンドがあります。
例えば、近年は、壁紙の一面のみにカラーを取り入れるアクセントクロスなどは大変人気で、あちこちで見かけるようになりました。
部屋の一面だけ色を変えるなら、費用もプラスにはなりません。このほんの一手間で、内見時の見学者のテンションは各段に上がり、喜んで部屋を選んでもらえるとなれば、対応しない手はないでしょう。
おしゃれなインテリア、よりエコな素材、より傷つきにくい素材など、見た目が似ていても、ターゲット層が最も気にする「何か」をしっかり取り入れておくことで、言語化できるアピールポイントを一つ増やすことが可能になるのです。
こうしたトレンドを把握している業者に相談できれば、物件オーナーは専門知識がなくても問題ありません。
物件価値向上には、ターゲット層にあった業者選びも大切なポイントである、と把握しておくことが出来れば、さらに強い味方になるでしょう。
リフォームではじめる、国や自治体の経済支援制度を活用した社会貢献。
肌で感じる地域需要、トレンドを取り入れたリフォーム。こうした情報以外に、国土交通省や各自治体から出ている情報を知っておくことも大切です。
2017年10月に、新たな住宅セーフティネット制度がスタートしています。住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、子育て世帯など)の入居を拒まない賃貸住宅のことで、国土交通省や東京都などが推進しているものです。
改定前の制度では、公営住宅をベースに進められてきました。しかし必要な公営住宅は不足している一方で、空き家は増加といったちぐはぐな住宅問題があったのです。
この問題への対策として導入されたのが、対象となる住宅を公営住宅に限らないとした新たな制度。この制度には、貸す側と借りる側、それぞれの不安要素を排除して、マッチング促進に向けた支援も行ってくれるという利点があります。
住む人を想定した必要なリフォームを施す場合には、住宅改修支援金が支給され、必要な要素を満たしたていると判断されれば、対象者への物件紹介も行われるのです。
住宅を無駄にせず、空き室を放置せず、必要な人に積極的に住んでもらえる部屋にする。こうした社会問題への参加も、住宅余りの現代において価値ある選択となるでしょう。
物件価値向上に最も大切なのは、コミュニケーションリレー。
ここまで見てきて分かるように良質な物件に育てるために、手順よりも大切なことは、関係者とのコミュニケーションだといえます。
現代のニーズを知るためには不動産業者との情報交換が必要であり、そのニーズを物件に反映させるためには、リフォーム業者や施工業者とのコミュニケーショも大切だと分かりました。
さらに、不動産会社に一連の流れを知っておいてもらうことで、不動産会社のスタッフも、お客さまとのコミュニケーションにおいて、自然な、生きた言葉で物件の良さを伝えてくれることでしょう。
物件オーナーを起点として、リレーのようにつながっていく丁寧なコミュニケーションこそが、物件価値を最大限に育て上げるキーポイントといえるのではないしょうか。