住み替え自由、多拠点暮らし、しばられない自由を求める若年層から「急速に広がる新しい価値観」

2020.8.4

デジタルネイティブとよばれるミレニアル世代、それに続き、SNSネイティブとよばれるZ世代は、すでに20代~30代をむかえました。

価値観がめまぐるしく変化する現代は、これまでになく、世代ごとに抱く「当たり前」の感覚が分散していく時代といわれています。

今後、10年、20年、賃貸物件の借り手となっていくであろう若い世代は、モノに執着がない「ミニマリスト」と呼ばれる側面もあり、バブル世代とは全く異なる消費動向があることは明らかです。

物件選びにも反映されるに違いない、若年層世代の価値観がどのように変化しているのか、物件価値への影響についても考えながら、見てみましょう。

見えている結果はおなじでも、背景に見えはじめたライフスタイルの変化。

現状、住まいの立地条件としての「駅近」人気は健在です。

しかし、背景にあるライフスタイルの変化には今後も注目しておきたいところ。駅近といえば、当然ながら、駅が近いだけでなく、病院や行政機関、飲食店など暮らしに必要な要素が整っている便利さも特徴でしょう。

ある調査によれば、住まい選びの条件として、「飲食店が多いこと」を選んだミレニアル世代は32% であったのに対し、その親世代(40~50代の働く男女)では7% と大きな差がありました。

また、別の調査でも、休日の夕食として「デリバリーや外食をする頻度が高い」と答えた20代は34.5%であったのに対し、40代以降はどの年代も10%台という結果でした。

新しいライフスタイルは、どこからやってくる?

若年層のなかでもSNSネイティブであるZ世代は、ネットに氾濫する世界中の情報を即座にキャッチします。様々なライフスタイルに触れていることから、社会問題や環境問題、そして多様性にも敏感であるといわれていますが、実際はどうでしょうか。

たとえば近年、米国において、ミレニアル世代の若者の間で、サステナブル系ブランドが人気を集めており、2016年に誕生したスニーカーブランド「オールバーズ」もその一つであり、ユーカリの繊維で作られた環境にやさしいスニーカーは、シリコンバレーで爆発的な人気を得ています。

2020年1月、日本にもオールバーズ国内1号店が、若者をターゲットとして原宿にオープンしましたが、初日の売上は、それまで一位だったニューヨーク店の初日売上を超えたといいます。

若年層にひびいているのは、環境意識よりも最先端。

オールバーズのような現象をうけ、日本でも、Z世代は社会問題や環境問題にも敏感であると聞かれるようになりました。

しかし実際のところ、日本における若年層世代の問題意識は、欧米のそれに比べると、まだほんの一部の敏感層に限られており、発展途上にあるといえるのです。

girlswalker総研が、2020年5月東京ガールズコレクション公式メディア「girlswalker」でおこなったSDGsに関する意識調査(対象:全国の16歳~34歳の女性 400人)では、SDGsの認知度は76%で、2017年3月の2%から大幅に向上しましたが、一方で、高い関心をもちながら具体的な取り組みができていない層(気になっているだけ層)は、その半数以上(53.5%)を占めました。

また、2019年に3万人を対象とした別の意識調査では、「環境問題への関心を強く持っている」Z世代女性は28.1%と女性全体の29.5%よりも低く、Z世代男性では31.6%で、男性全体の27.1%よりは高いものの、男女ともに関心が高いとはいえない割合となっています。

住まいのキーワードは多様化をうけいれる柔軟性

問題の本質に追随できているか否かは別として、サステナブルや環境対応商品などのトレンドを若い世代が世界レベルでキャッチできている背景には、やはり、SNS経由で “最先端” を目にしている影響が大きいのでしょう。

結果として、欧米に似た消費行動が起こっていると考えられます。 2019年 1月、株式会社ジャパンネット銀行により行われた「住まいと暮らし」をテーマにしたアンケート調査にも、彼らが取り入れつつある新しい価値観が現れていました。

この調査は、日本国内の18~25歳の働く男女、また、彼らの親世代である40~50代の働く男女、それぞれを対象に同じ質問がされています。

「住まいを決めるうえで重視すること」の1位のみ、「住宅の性能がよいこと」が両世代共通で選ばれ、ミレニアル世代で69%、親世代で66%とそれぞれ最多となりましたが、注目は、2位以下の項目です。

◆内装は自由に選びたい

「住宅の内装が好みである(または自分で選べる)こと」を選んだ人の割合はミレニアル世代が約6割の56%であるのに対し、親世代は半分以下の47%でした。

親世代にとり、内装は専門家に任せるのが通例であり、諦めもあったでしょう。

しかし、若い世代は、好みに替えられるDIYなどの手段やアイデアが豊富に存在することや、実現性について、世界の事例を多く知っており、より発想が豊かであると考えられます。

◆自由に住み替えたい

「気軽に住み替えができること」を選んだ割合は、ミレニアル世代が16%で、親世代が5%と10ポイント前後の差があります。

また、「持ち家や賃貸などにとらわれない、新しい暮らし方に興味はありますか?」という質問では、ミレニアル世代の約6割となる57%が「ある」と回答し、親世代では37%に留まりました。

生まれたときから日本の不景気を見ているこの世代は、経済的には非常に保守的であり、将来を不安視する若者の比率が、世界的に見ても群を抜いて高いといいます。

長年、住宅ローンや会社の指示に縛られていた親世代の暮らしより、身軽でいられる新しい生活スタイルを望んだとしても不思議はありません。

インフルエンサーと呼ばれる人々が、SNSで紹介する世界の多様な生活スタイルも、彼らの発想に大いに刺激を与えていると言えるでしょう。

新世代らしいサービスの台頭

定額住み放題の多拠点生活プラットフォーム “ADDress” のようなサービスが誕生した背景には、こうした新しい世代の気分が大きく作用しているといえます。

2018年12月発足時のプレスリリースでは、内閣府の「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」で、東京在住者の4 割が地方への移住を検討している、又は今後検討したいと考えているとあり、中でも、30 代以下の若年層の移住に対する意識が高い、とありました。

同時に、リクルートホールディングスの「2019年のトレンド予測」では、「デュアラー」がトレンドになると紹介されており、地方に移住し、定住したいわけではなく、行き来する自由が視野にあるという傾向もあるのです。

ミレニアル世代に「住まい・暮らしに対する価値観」を聞いた質問では、数年後に自分がどこに住んでいるかはわからない(72%)、土地や家の価値よりも、その土地や家で何ができるのかのほうが重要だと思う(71%)という回答が大きな割合いを占めました。

時代変化に柔軟でありたい、賃貸契約などの決まりごと

一人ひとりが独自の価値観を育み、住まいへの要望においても、これまで以上に「多様な生き方」が認められる社会を求める傾向にあることが分かります。

前述のZ世代の意識調査でも、「周囲の人と比べて、自分が浮いていないかいつも気になる」傾向にありながら「周りの人とは違うものを持ちたいと思っている」という対照的な回答が同時に存在していました。

自由でいるために、一つの概念や趣味嗜好などに縛られることは極力避け、生き方も柔軟に変えていきたい、というこの世代らしい志向がうかがえます。

未来の住まいを提供する側は、急速に変貌する「価値動向」に敏感でありつづけ、従来の考え方にしばられない、柔軟な対応が求められているに違いありません。

住まい手の要望にあわなくなった契約条項や慣習も、柔軟に見直すべきときに来ていると言えるでしょう。