インスタで部屋を選ぶ若者たち「アート作品のようなオリジナルの世界観をどう表現できるか。」

2020.5.7

2017年に 「忖度(そんたく)」 と並んで流行語大賞になった 「インスタ映え」 現象は未だ衰えることがなく、必要な情報は、写真で探す、共有する、という文化となって日常に浸透し続けています。

インスタグラムユーザーは、日本国内でも2019年には親サービスであるフェイスブックの月間アクティブユーザー数を超え、3,300万人を記録。世界では10億人のアクティブユーザーを獲得しました。

また、近年では男女差も減り、年代も老若男女に使われるようになり、この習慣は、物件の探し方のみならず、物件の決め手としても無関係ではなくなっているようなのです。

若者は確実だと思う物件しか見学しない。

部屋探しをする見学物件数が年々減っています。2016年度の平均3.1件から、毎年徐々に減り、2018年は平均2.8件まで下がっていて、10年前の4.5件から比べると4割下がっていることになるのです。

不動産会社を訪問する前に、見たい物件はネットで徹底的に絞り、確実に思える物件しか見ない、という若者が増えているのです。

SNS文化が当たり前になっているいま、写真や動画で情報を得ることが主流になっていて、知りたいことがあると、まず動画や写真を探し、文章から情報を得ることはあまりない、という話も聞きます。

プロ顔負けの写真を撮る若者たち

また、日々観る目を養っている彼らは、情報発信者側のインスタグラマーとしての努力も惜しみません。

インスタ映えする写真を撮影するために、あらゆる工夫をしています。 自然光を探したり、背景を選んだりは当たり前。タピオカドリンクなど手に持って撮影するものは #持ち画 とよばれハッシュタグつきで投稿され、かわいい持ち方研究にも熱心。

また、持ち方のみならず、ほんの少しだけ映りこむ指先の “チラ見せネイル” も写真の質をあげる大切なアイテムです。

インスタグラムでライフスタイルを売る

インスタをきっかけにして売れる市場には、ユーザー側からの投稿で、自然発生的に盛りあがる例もあれば、インフルエンサーを起用した企業のマーケティングもあります。

日々、ハワイから投稿される美しい有名人のライフスタイルは、景色も食べ物も魅力的。彼らの素敵な暮らしを見ることが、いつの間にか毎日の習慣のようになっていきます。

その中で、時々、「そういえばね!」ととても自然に登場する化粧品やファッションアイテムは、信頼できる親しい人に勧められたかのような感覚で、すんなりチェックしてしまう。

企業側は、こうしたインフルエンサーごとにクーポンコードを発行し、どの写真、どのインフルエンサーが効果を発揮しているかを測ることもできるので、見逃せない手法の一つであることは間違いありません。

物件もインスタグラムで選ぶ

スイーツからファッション、旅行先選びまでインスタグラムか活躍する時代でも、物件までインスタ映えで選ぶという流れは想像していませんでした。しかし、住居も対象外ではないようです。

家のなかでも、料理をしたら撮影、ペットを撮影、買ったものが届いたら撮影、気が抜けないほど撮影したくなる場面は次々にやってきます。

自然と、インテリアへの意識も高まり、料理の背景になるランチョンマットやトレーまでも、映り込む大切なアイテムとして意識されていきます。

若者の持たない暮らし

こうした時代の流れを上手にくみとったサービスの一つに、2018年10月にリリースされた 「airRoom」 という家具やインテリア雑貨のサブスクリプションサービスがあります。

最初は家具のレンタルから始まったサービスですが、現在は、家具だけでなく雑貨もふくめた 「インテリアコーディネート」 を提案するサービスへと成長しています。

北欧風、アンティーク調などのおしゃれなアイテムを気軽にレンタルできるうえ、配送料や返却料、組立、設置はすべて無料。

くるくると短いスパンで好みが変化する若い世代にとって、家具のような高い買い物をするときにネックになるのは「好みが変わったら後悔するかもしれない」という思考。

所有してしまわずに、 短いスパンで「選び直せる」レンタルは魅力的で、しかも、家具一点のみならず、周辺アイテムごとレンタルできれば、ちぐはぐなコーディネートをする心配もありません。

若者の間にも浸透しつつある「ミニマリズム・持たない暮らし」ブームとも、相性のよいサービスといえます。

アート作品のようなオリジナルの世界観を部屋でどう表現していけるか

デジタルプリント壁紙、という市場があります。一枚絵のようなデザインでも途中でデザインが切れることがないため、アート作品のような個性的なオリジナルデザイン壁紙を作ることが可能。

また、従来の壁紙と違い、貼りたい壁のサイズにデザインを合わせられるため、デザインを選び、オーダーに合わせて1枚ずつプリントすることも出来て、制作コストも安価だといいます。

空室改善のためにリノベーションをするにはかなりの費用がかかりますが、一面だけでも、特徴的な壁紙に貼り替えることができれば、個性ある物件としてアピールすることもできる。

物件ごとに壁紙デザインを変え、部屋探しの際に好みの部屋を「壁紙で選べる」ようにしたり、また、部屋選びの際に、入居者に壁紙を選んでもらう「選べるサービス」を付加することもできるかもしれません。

貼り替えられるという気軽さが、若い消費者に安心感を与えられる可能性が大いにある時代。

さらに、空き室対策や賃料アップ対策のみならず、事前に「見学してもらえる物件」として選んでもらうための ” 写真映え効果 ” や、住んでから部屋で撮る ” インスタ映え写真”にも貢献できそうです。 選べる、変更できる、 借りられる、若者に響くキーワードは、賃貸物件との相性もいいのではないでしょうか。