ホテルのような安心感が成約率を上げる。

2020.10.5

内見に来る方は、当然のことながら、期待感を抱きつつ、不安を解消しに来ています。

ネットに出ていた物件の真偽は如何に。そして、ネットになかった外観の印象や近隣の様子も見ておきたい。

しかし、内見後、条件をほぼクリアした物件であるにも関わらず、「少し考えたい」と保留になってしまうのは何故でしょうか。

実際に見てもなお、見えないなにかがあった。決め手になる確固とした理由が見つからないなど、何かしらの不安材料が残ってしまったと考えられますが、こうした不安に基づく先送りを解消する方法はあるのか、みてみましょう。

脳科学は確実に部屋探しに影響する。

ことの大小はあったとしても、部屋を探している人には、なにかしら人生の転機が訪れていると想像できます。

部屋選び、引越し以外にも、多くの決めるべきことをかかえている状況にあるとすれば、数年間は住むであろう部屋を選び取るには、さらなる、決断力、決断する、という意志の力を絞りだす必要があるでしょう。

最近の脳科学の研究では、意志力は実体のある能力であることが実験によって示されているといいます。

人はなにか大きな出来事があると、意志の力をそちらに注いでしまい、他の事にまで頭、脳の資源がまわらなくなってしまうというのです。

問題を抱えているときには、ちょっとした片付けも出来なくなり、部屋が散らかってしまう、というのは多くの人が経験している事象ではないでしょうか。これは、意志力が大きなことに大量消費されている故だと考えられます。つまり、意志力というという資源は限られていて、すぐに枯渇する力。

人生の転機において、様々な解決事案を抱えている人の立場にたてば、検討事項がのこる部屋は、決めにくい、という印象を与えている可能性が高まってくるのです。運がよければ、第一印象がとても良く、深く考えずに決断してもらえることもあるかもしれません。

また、考えるのが面倒になり、この部屋でいいかと決めてしまう場合もあるでしょう。しかし、どちらも見た目は、おなじ即決でも、のちのち確認不足のトラブルに発展することも、大いに考えられるのではないでしょうか。

ホテルのような安心感を与える部屋が信頼される。

部屋探しといえば、ホテルの部屋探しも、期間の長短はあるものの同じ部屋探しです。 安心できる居場所を確保したいという意味では、基本となる検索条件は似通っています。

リラックスするのに必要な広さはどのくらいか、清潔感が保たれているか、予定を考慮したアクセスの良さも確保しておこう、といった具合。

初めて訪れる土地、部屋であっても、瞬時に宿泊者を安心させることができるホテル。そこに備わっているものは、清潔感やコンシェルジュの存在だけではないでしょう。

そこには、お客さまの心に不安を残さない、考える無駄を省くようにする、膨大な知恵がたくさん揃っていることに気がつきます。 これを見習わない手はありません。

たとえば、設備。ホテルの部屋の空調設備には、近くに必ず、分かりやすい使い方の説明が置かれています。部屋のテレビをつければ、ホテル内の施設案内が流れたり、何かしたい気持ちになると、部屋に置かれているファイルや冊子を探せば、必ず、助けてくれる情報が見つけられるのです。

フロントの内線番号、フィットネスやルームサービスの予約案内、街の地図に、近隣の観光施設案内。万が一、手近な情報が助けてくれないときには、連絡できるコンシェルジュがいる、という安心感も用意されています。

こうした一連のサービスに共通しているのは、ぎりぎりまでスタッフに尋ねなくても、必要な情報が揃うように準備されているという点。 お客さまの気になる点を、流れにそって予測し、先回りをし、”痒い所に手が届く” 案内を準備している、というわけです。

内見者が考えることを一つでも減らすことが、成約率を上げる。

お客さまの行動を先読みするホテルのサービスは、物件案内に立ち会うことのないオーナーの方にとっても、参考にして、役立てることはできそうです。

冷暖房、給湯器、インターホンなど設備の使い方、調子が悪い場合の対処法や相談方法などの決め事を前もってシェアしておくことは、簡単なようで、意外と出来ていないのではないでしょうか。

説明するほどではないと思える一般的な設備だとしても、説明する意志があることが示せるだけでも、安心感は違います。

電気製品売り場で、丁寧な説明がついている湯沸かしポット、説明のないポット、慣れ親しんだ商品であり、どちらも同じ機能を持っていたとしても、なんとなく説明つきのほうを購入したくなる、というように、そこはかとなく与えられる安心感には大きな効力があるのです。不安材料になりそうなことを、前もって解消する。

内見者が、考えることを一つでも減らすことができれば、安心感をもたらすことにも繋がり、心に余裕を生むことができるのです。

また、たとえば、季節によっては「空調の有無を確認し忘れた」「古い物件だけど空調が壊れたら、自分で買うことになるのだろうか」といった、内見後に時間が経過してから思いつく不安の数々を先回りして解消することも可能になります。

内見前の気持ちを先回り。内見後の気持ちも先回り。こうしたサービスを、お客さまの物件案内に取り入れてみる価値は、大いにあるといえるでしょう。

目に見えない安心の提供こそ、家主の仕事。

内見者の来訪に際し、心に残る、忘れられない、捨てきれない、魅力的な存在となれるかどうか。

決断を先送りをしてしまう理由には、他にも、他所との比較、金額の検討、家族と相談したい、など様々な理由が考えられますが、いずれにしても、貴重な訪問者に対して、出来る限りの準備を施しておくことは、どんなケースにおいても効力を発揮します。

ホテルが最高の安心感を与えようと試みるのは、またここに来たいと思い出してもらえる存在になることであり、リピーターを生むためでしょう。

物件オーナーという立場は、物件がご自身の大事な商品であるにもかかわらず、その魅力について、お客様に説明する機会や場をほとんど持っていない、ある意味、特殊な商品の所有者です。

会えないお客様に対して、どうやって魅力を伝えるのか。小さくても様々なアイデアで、お客様の心をフォローし、オーナー不在でも活躍してくれる、先回りの思考を取り入れた「物件紹介アイテム」を用意しておく。

こうした熱心な試みは、やってみて損はない、内見者の安心感に貢献できる確かな試みにちがいありません。