約7割が賃貸契約で後悔したことがある「誰が住んでも快適な状態にしておくことが良いオーナーの条件」

2021.4.2

空き室期間を短くするために、「部屋探しをしているお客さまの思考」を把握しておくことは、たしかに大切な要素の一つです。

「賃貸物件の決め手」や「人気設備ランキング」「契約者動向」といった最新動向チェックも、退去後のリフォーム前には、参考情報として欠かせません。

しかし、忘れてはならない要素がもう一つ。こうしたお客さまの動向情報は、あくまでも、部屋探しをしているときの思考であるという点です。

空き室を埋めるためにも、即時判断に役立つ仕込みをすることは大切ですが、思った通りの部屋だったと感じ、また、不安が生まれても、対策が可能というように、長く住んでもらえる部屋になるという態度も必要だと考えます。

長く住んでもらう対策は、できているでしょうか。

入居者に尽くし、喜んでもらうことが必ず利益に繋がる。

部屋を選ぶのは、部屋探しをしているときですから、需要に合った設えにしておくことは大切ですが、空き室期間を短くするまえに、空き室にならないようにすることは、さらに大切だともいえます。

もちろん、部屋を気に入ってくれていた長年の入居者であっても、引越しを余儀なくされる事情は様々あり、それを止めることは出来ません。

せっかく良い関係を築いてきた入居者が出てしまったら、またゼロからお付き合いを始めなければならないのが残念。

長く住んでくれますようにと願いを込めて、損はしない程度のサポートはしておこう。

こんなふうに考える物件オーナーも多いのではないでしょうか。しかし、損しない程度といわず、しっかりと入居者の満足度をあげることは、この先、益々意味を増してくるだろうと考えます。

同じ3DKでも周辺環境、建物品質、隣人などで価値が全然変わってくる。

賃貸物件は、ある意味とても特殊な商品といえるでしょう。電化製品であれば、商品個体の良さは分からなくても、製造メーカーの信頼性や、使った人の口コミで、かなり精度の高い価値判断が可能です。

ところが、物件の場合には、住んでみないと分からないことが山ほどある商品価値の個体差がほとんどない商品と違い、周辺環境、建物品質、隣人など、おなじ3DKであっても、個々の事情が全く違う。

誰かの意見が、実質、参考にならないのです。入居後の失敗例として多く挙げられるのは、皮肉にも、部屋探しの「希望条件」や「人気設備」ばかりに目がいっていて、肝心な視点を見逃していたようだ、という類の後悔であることも少なくありません。

商品のスペックチェックに慣れている人も、スペックにない状況まで想像する、ということは不得手なのかもしれません。

約7割が賃貸契約で後悔したことがある。

入居したばかりの人が、ほどなく退去を申し出た場合、可能な限り退去理由は知っておいた方がよいでしょう。

住んでみないと分からない価値基準があるとすれば、それは、住んだ人に聞くしかありません。

貴重な情報として、ぜひ共有してほしいところです。株式会社AlbaLink(東京都江東区)が行ったアンケート調査「賃貸物件を借りて後悔する瞬間についての意識調査」(2021年1月12日~19日に実施)によれば、「賃貸契約で後悔したことがある」と回答した人は、500人中349人で、全体の約7割でした。

このうち上位は、「騒音トラブルがあった(152)」「設備がイマイチだった(112)」「住民や大家の質が悪かった(100人)」というもの。事情を聞くことは耳の痛いことでもありますが、聞くことで対処できることもありそうです。

また、次の入居者が入る前に対処しておく。次の入居者には、事前に告知ができるなど、知っておくメリットは多いでしょう。丁寧に対応しておくことで、少なくとも、思いもよらない即刻退去やトラブルは避けられる確率も高まります。

但し、前の人の気になることを、皆が気にする訳ではありません。重要なのは、知っておくことで説明ができる、心構えができるという誠実さにあるといえるでしょう。

不安が少なければ少ないほど、長く住んでもらえる

入居後、おそらく満足して住んでくださっている入居者に対し、さらに満足度を上げていくにはどうしたらよいのでしょう。

まず、コミュニケーションを取り易く、遠慮なく相談ができる、という体制をとっておくことは大事です。退去理由を話してもらうように、退去しないにしても、我慢して過ごしている方もいないとはいえません。

相談しやすい環境を整えておくことにより、不満を極力減らしていく、または、話し合うといった姿勢をとることが可能になります。もう一つ、積極的にできる対応として、住宅設備の定期メンテンナンスを充実させることも有益です。

現状では、設備は、壊れない限り修理をしないというスタンスのオーナーも多いかもしれません。

しかし、壊れてから修理をするのでは、住民は不便です。お湯のでなくなった給湯器を修理するのに日数がかかれば、その間、銭湯を探したり、宿泊先を探したりと何かしらの対策が必要になり、場合によっては、補償を求められるケースもあるでしょう。

住民のみならず、物件オーナーにとっても予期せぬ出費になりえます。さらに、設備というのは、使用年数が同じせいか、次々同時期に壊れることもよくあるため、一難去ってまた一難、となる可能性も高いのです。

そうなれば、住民にもオーナーにも、両方にとっての痛手です。定期メンテナンスを入れることで、事態の先回りをする。壊れるまえの少額出資で住むようにしておくことは、オーナーにとってもメリットであり、住民にとっても安心な物件、ということになるでしょう。

不安が少なければ少ないほど、長く住んでもらえる要素になり得るのです。

誰が住んでも快適な状態にしておくことが、「良いオーナーの良い物件」の条件

特殊な商品である賃貸物件は、住んでみないと、その良さも欠点も分からない。しかし、近年では、そうした困惑を解消してくれる新しいサービスも出始めているようです。

株式会社Amufi(本社:東京都江戸川区)が、2021年2月9日にリリースした不動産賃貸サービス「RoomPa(ルムパ)」は、住民が、部屋を退去する前に、「住んでいる人だからこそわかる情報」をシェアすることが出来るといいます。

一昔前までは、一か八かで購入せざるを得なかった商品が沢山ありました。初めてみるワインのボトルは、飲んでみないと美味しいかどうかが分からない。初めて訪れた町のレストランでは、どんなメニューがあるのか、美味しいのか、入って、注文しないと分からない。

しかし、いまでは、不安なまま購入せざるを得ない商品は、かなり少なくなりました。

高確率で、なにかしらの事前情報を入手することが可能です。「RoomPa」のようなサービスは、不動産業界には、まだあまり見られませんが、皆が欲し。必要としている以上、この先、増えていくといえるでしょう。

所有物件を大切にして、住んでくださる住民も大切にする。

それは、住民が変わったらゼロになってしまう投資ではなく、「良いオーナーの良い物件」として引き継がれていく。この先は、益々、こうした価値が引き継がれていく世の中になるのではないかと考えます。