自然が家の中に増えたら、明らかに生活が豊になった。

2020.5.7

太陽光や植物の緑など自然にふれることで、働く環境での幸福度・創造性はそれぞれ15%、生産性は6%も上昇することがわかっています。

精神の安定や直観力の向上には脳内物質セロトニンが活躍しますが、セロトニンの分泌にも日光浴は不可欠。

特に、朝の目覚めから30分以内に日光を浴びて、体内時計を目覚めさせるることが重要だといいます。

さらに、日光浴は体内でビタミンDを生成することで、心臓病、認知症、うつ病、アレルギー疾患、感染症など、様々な慢性疾患を軽減させることも判っており、屋内で過ごしがちな現代人の暮らしに、どうしたら日光との接点をつくることが出来るのか、その道筋を示すことは、住環境を考えるうえでも大切な課題といえるでしょう。

バルコニーの存在価値

暮らしのなかで実現できる手軽な日光浴のためには守っていきたいバルコニーや庭ですが、実際の需要や存在価値はどうなっているのでしょうか。

近年、バルコニアンという言葉も使われるようになり、バルコニーの活用願望は一見高まっているようにもみえますが、一方で、1990年代半ばころに始まった日本のガーデニングブームは、落ち着いている印象です。

またここに来て、世界的な外出自粛が行われている昨今の状況下、家で過ごす時間が増えたことで、欧米では、自宅の庭での野菜作りやガーデニングをする人々が大幅に急増中というニュースもありました。

近未来におけるバルコニーと庭の存在価値、そして需要はどうなっていくのか、改めて見てみましょう。

ほとんどの人が、バルコニーを洗濯にしか使えていない。

2017年にイケア・ジャパン株式会社が行った、バルコニーの使い方に関する実態調査において、バルコニーへの理想は、「もっと広くなって欲しい」63.5% が最も多く、「過ごす時間をもっと充実させたい」40.6%、「過ごす時間が充実すると幸福感が増すと思う」と考えている人は、全体の40%以上という結果でした。

ところが、実際の使い方では、「洗濯利用」85% が1位、「ガーデニング」27.3%、「気分転換」26.2%、「景色・風景を楽しむ」25% と続き、洗濯干しのみに利用する人がほとんど、という結果です。

バルコニーでしたいことに「ガーデニング」を挙げた人は47% と半数近くおり、実際に行っている人との差は、20%もひらきがありました。

人間は本能的に自然を求める生き物

日々の暮らしの中で、庭やバルコニーで自然とふれあう時間を過ごしたい、と思うのは人間の本能なのでしょう。

「人間は本能的に自然を求めるようプログラムされている」 アメリカの著名生物学者 E.O.ウィルソンが、自著『Biophilia(バイオフィリア)』のなかで提唱したバイオフィリア仮説と呼ばれる理論です。

近年の欧米では、このバイオフィリア仮説に基づいて、オフィス、店舗、そして住宅にも緑を取り入れる「バイオフィリック・デザイン」が建築・インテリアのデザイントレンドとなっており、2018年1月アマゾンのシアトル本社として登場した緑地ドーム「The Sphere」は、その一例として有名。

4階建てのドーム型の建物には、4万本もの樹木・植物が植えられました。

自然が家の中に増えたら、明らかに生活が豊になった。

自然と融合する、住居としてのバイオフィリック・デザインがどんなものかといえば、代表的な作品に、アメリカのペンシルベニア州西部にある「落水荘」があります。

建築家フランク・ロイド・ライトの代表作の一つであり、彼は、近代におけるバイオフィリアの主唱者の1人でした。

一般的な住宅が、落水荘の域まで達するのは至難の業かもしれませんが、わたしたちの暮らす社会でも、なんとか緑のある暮らしを手に入れたい、という需要があることは、次のようなサービスの成功事例からも読み取ることができます。

株式会社Crunch Styleが運営する、花の定期便「Bloomee LIFE」は、全国約100店舗の花屋(加盟店)から、ポストに季節の花が届くサービス。

2016年6月の提供開始から3年で、ユーザー数1.5万人以上を獲得し、日本初・最大級の花のサブスクリプションサービスとして急成長しています。

ユーザーアンケートでは、80%以上のユーザーは、今まで花を飾る習慣がなかったといい、また、暮らしが豊になったと答えました。

花を買う習慣のなかった潜在層にうまくアプローチできたことが分かる事例です。

もう一つ、アース製薬株式会社の園芸ブランド「アースガーデン」は、2018年3月にLINEの「ガーデニングのお悩み解決ホットライン」を開設。

開始から1年後の2019年4月、登録者数は7万人を超えました。

園芸シーズンには、月に約1500件程度の相談が寄せられるといい、写真を見せながらの相談も可能で、回答も早く、解りやすいことから評判も上々です。

どちらのサービスも、自然のある暮らしに憧れながら、最初の一歩を踏み出すきっかけを見い出せずにいた層に、適切に寄り添うことのできた好例といえるでしょう。

1日20分バルコニーで日光を浴びる。

庭やバルコニーでのガーデニングは、自然に触れ、太陽の光をたっぷりと浴びることができる時間です。

機能医学の第一人者である斎藤糧三医師の著書によると、「より多くのビタミンDを作るなら正午前後、地域や季節にもよりますが、1日20分程度を目安に、太陽を浴びましょう」とあり、また、「日光浴で多くのビタミンDを作ることは皮膚がん以外の大部分のがんの予防・改善に役立つと示唆されている」とされています。

現代人の多くは、美容の側面から、紫外線を浴びることに抵抗感があるとも言われます。

しかし、1日20分の適度な日光浴は、”本質的に自然を求める” 私たちにとって必要な時間なのでしょう。 自宅でのガーデニングは、その適度な日光浴を、無理なく暮らしに取り入れられる、適切な趣味の時間といえそうです。

住まい緑化の近未来

この先、IoTに対応したガーデニング環境が整いはじめれば、水やり、施肥、太陽光の調節など、遠隔にいながら庭やバルコニーの管理が出来るようになっていくでしょう。

そうなれば、集合住宅全体での緑化計画が進んだり、現状ではライフスタイルの都合で、緑とふれあう機会を逃している層の、新たな趣味になることも考えられます。

暮らしのなかで自然との接点になりうる庭、そしてバルコニーは、今後益々身近になり、心にも身体にも有益な存在になっていくのではないでしょうか。